「子どもにはおもちゃが必要」という考えは一般的ですが、モンテッソーリ教育では異なる考えです。
今回は、モンテッソーリ教育においてなぜおもちゃが重視されないのか、モンテッソーリの基本理念と共にその理由を解説します。
モンテッソーリ教育における「目的ある活動」の重要性
モンテッソーリ教育では、子どもが「自己の成長や学びを促すために目的を持って取り組む活動」が大切とされています。
モンテッソーリの教具は一つ一つに明確な目的があり、例えば、数を学ぶためのビーズや、手先の発達を促すためのパズルなど、特定のスキルや知覚を習得することを目的として作られています。
一方で、おもちゃは単に「楽しさ」を提供することが主な目的であり、学びや目的が明確でない場合が多いです。
おもちゃが持つエンターテイメント性や興味を引く性質は一時的なものに過ぎず、子どもが主体的に学ぶ力を引き出すことは難しいとされています。
自然環境を通じた学びの大切さ
モンテッソーリ教育では、子どもが自然環境や日常生活の中で学ぶことが重要とされています。
植物を育てたり、簡単な家事を手伝ったりと、現実の生活を通じた経験が、子どもの成長にとって非常に有益とされます。
これにより、子どもは自分が生活の一部であることを感じ、責任感や自主性を養うことができます。
おもちゃでは、この「現実世界との結びつき」が欠けているため、モンテッソーリ教育が目指す自己成長の一助にはなりにくいと考えられます。
例えば、植物を世話することは自然のサイクルや命の大切さを学ぶ機会を提供しますが、おもちゃではそれが実感できないのです。
「集中力」を養うための環境整備
モンテッソーリ教育は、子どもの「集中力」を育むことに力を入れています。
教具はシンプルで秩序あるデザインが特徴で、特定の感覚に集中できるよう設計されています。
一つの活動に取り組み、完成するまでやり遂げることで、子どもは達成感を得ると同時に、集中力を養うことができるのです。
おもちゃは通常、色や音、動きなどが豊富にあり、興味を引くための刺激が多く含まれています。
これにより、子どもは次々におもちゃを手に取ってはすぐに飽きてしまい、集中力を持続するのが難しくなります。
モンテッソーリ教育が求める「静かな集中力を育む環境」とは異なり、子どもの注意を散らす要因になりかねません。
自己訂正を促す教具とおもちゃの違い
モンテッソーリ教具には自己訂正機能が備わっています。
つまり、子どもが間違えたとき、自ら気づき、修正する機会を得られるように設計されているのです。
おもちゃには、自己訂正機能が備わっていないものが多く、ただ遊ぶことが目的になりがちです。
例えば、音や光で反応するおもちゃは、子どもに即時的な刺激を与えますが、間違いを学びに変える仕組みがなく、成長には繋がりにくい傾向があります。
モンテッソーリ教育では、こうした自己訂正の経験が子どもの成長にとって非常に重要視されているのです 。
子どもの内なる発達欲求に応えることの重要性
モンテッソーリ教育では、子どもが本能的に持つ「発達への欲求」を尊重することが大切にされています。
子どもは自分の発達段階に応じて「やりたい」と感じる活動があり、それに応じて成長するようにできています。
モンテッソーリの教具は、その時期に応じた子どもの発達ニーズを満たすためにデザインされており、具体的なスキルの獲得や認知の発達を促します。
おもちゃはこの内なる発達欲求に必ずしも応えておらず、一時的な楽しさを提供するものが多く見られます。
モンテッソーリ教育では、子どもが自らの発達に応じて「自ら選び、取り組むこと」を重視しており、単なる娯楽であるおもちゃは必須とされていません。
子どもが自分で選び、達成感を感じられる環境が、成長には欠かせないのです。
おわりに
モンテッソーリ教育が目指すのは、子どもが自発的に活動に取り組み、自己修正しながら学んでいく環境を提供することです。
おもちゃは一時的な興味を引きますが、モンテッソーリ教育に必要とされる「目的を持った活動」や「集中力」「自己訂正の機会」といった要素が欠けています。
そのため、モンテッソーリ教育ではおもちゃは必須のものとされず、代わりに日常生活や自然環境を通じて子どもが学ぶ機会を提供することが重要視されているのです。