モンテッソーリ教育における「秩序の敏感期」とは、子どもが秩序や規則性に対して非常に強い感受性を示す特定の時期のことを指します。
このことがいったい、子どもたちにどのような影響をもたらすのか記事にまとめてみました。
秩序の敏感期とは
秩序の敏感期とは、特に幼児期(0歳から6歳)に見られる行動で、子どもが自身の周囲の環境や人間関係、日常のルーティンなど環境の中からあらゆる秩序を見つけだす特別な時期です。
『秩序』という言葉を使うと、なんだか堅苦しい印象になりますが、要は、この世にある常識を吸収しましょうという時期のお話です。
- 物にはそれぞれ定められた使用方法があること
- 物にはそれぞれ定められた位置があること
- この世界には共存のためのルールがあること
- この世界には常識という共通認識があること
大人にとっての当たり前は子どもにとっての当たり前ではありません。
勘違いしてはいけないのは、この常識と言われるものが、発達でいう、目が見えるようになる、色が見えるようになるというような一連の発育過程のように体の仕組みとして現れてくるものではないということ。
年齢が進むにつれ、自動的に湧き出てくるものではないのです。
秩序の敏感期が育てるものとは
秩序の敏感期の中にいる子どもは、物事が特定の方法で行われることに固執したり、自分の周囲が予測可能であることを好む傾向があります。
秩序の敏感期が育てるものとは何かを紹介していきます。
安心感をはぐくむ
生活リズムであったり、身のまわりの当たり前が増えること、つまり、秩序の内的構築が進めば、さまざまな事柄について予測することが可能になって来ます。
子どもは予測できることに対して安心感を抱きます。
自立の基礎となる
物の定位置を理解できるようになれば、それは、自立的な活動の助けになります。
なぜならば、大人の手を借りなくても、自分で使いたい時に、使いたいものを、使いたい場所から取ってくることができるからです。
物の位置が分からなければ、必ず、大人の手を借りることになり、いつまで経っても自立が進みません。
社会ルールを身につける
この秩序は単なる物理的なものだけでなく、社会的秩序にも関わります。
子どもは家庭や学校でのルールやマナーのような秩序を通じて、社会の中での自己の役割や関係性を理解していきます。
例えば、食事の時間に決まったマナーを守ることや、友達との関わり方を学ぶことも、この秩序の一環です。
常識を身につける(当たり前という感覚)
物事の因果関係や自然現象、言語の法則性、数学的な法則性など、この世界に存在する当たり前な事象の知識を身につけます。
この一般的常識を土台として、知性を育んでいきます。
秩序の敏感期の具体例とは
娘が2歳頃に顕著に表れていた秩序の敏感期を例にお話しします。
料理の時はエプロンをする
料理をする時に、エプロンをしていないと、エプロンを身につけるまで「おかあさん、エプロンつける」としつこく言われ続けました。
お経のように、エプロンつけるエプロンつけるエプロンつける…と唱えられるので、どんなにパパッと済む調理でも、調理台に向かって作業をするのであれば、エプロンをつけることが必須。
娘の中で秩序となっていたみたいです。
ご飯を食べてから着替えをする
ご飯を食べてからでないと朝の着替えをしませんでした。
この順序をこちらの都合で変えようとすると大泣きして嫌がります。
生活のルーティンとして、順序が構築されています。
普段はいない時間帯に父がいる
朝起きた時には父は仕事に出ていて居ないのが秩序となっており、休日、朝ごはんの時間帯に父がいる空間で食事をしようとすると、「ご飯食べる」「布団で寝る」を何回も繰り返し、往復。
謎行動の果てに、大泣きしていました。
普段いないはずの時間帯に父がいるのが違和感だったみたいです。
父がいなくなると、何事もなかったかのように、食事をしていました。
道具がいつもの場所にない
物があった場所をよく覚えています。
いつもあるはずのものがなくなると「ない!」とひたすら探し続けていました。
片付ける場所もよく覚えています。
このようなことが頻繁にありました。
モンテッソーリの環境では、物の配置や日々の活動の順序が非常に重要視されています。
毎日同じ時間に食事をし、同じ場所で学び、道具が決まった場所に整然と置かれていると、子どもはその環境の法則性を吸収精神によって自分の中に取り込みます。
そして、この慣れ親しんだ秩序に安心感を覚えるのです。
逆に、物の位置が頻繁に変わったり、日常のリズムが乱れたりすると、子どもはその環境に適応しづらくなることがあります。
これは、子どもが世界を理解するために外的秩序(法則性のある外部の環境)を必要としているためです。
ネントレなどで、寝る前のルーティンを作りましょうという話はよく聞きませんか?
これも、秩序の敏感期を知っていれば理解できる方法ですよね。
秩序の感覚は自然と生まれない
この秩序の感覚というのは、予め生まれ持った機能ではなく、環境により身につけていくものです。
その証拠に、人間は生まれ育った国の文化に馴染み、それを常識として身につけます。
家の中でも土足で生活する文化の国に生まれれば、その人にとってはそれが常識です。
ですが、日本人のように、屋内では靴を脱ぐという文化の国に生まれれば、そこではそれが常識となります。
生まれ持った遺伝子により、秩序の感覚が湧き出てくるのであれば、日本人から生まれた子どもは日本の文化感覚を引き継いで生まれてくるという考えになるでしょう。
しかしながら、実際には、人種などは関係なく、育つ環境の秩序に適応していくのです。
乳幼児期はとても大事だと言われてますよね。
まさに、この常識が感覚として根付くのが、この時期の特徴であり、それゆえに一生付き合うこととなる秩序感を身につける大切な期間と認識されているのです。
どういうことかというと、私たち大人の感覚を考えてみると分かりやすいでしょう。
具体例を挙げると、トイレットペーパーの居場所はトイレにあり、リビングやキッチンにあるものではありません。
私たち大人はその秩序を身につけているため、トイレットペーパーがリビングのテーブルの上にあれば違和感を覚えると思います。
もしも、服を着ていない人が町中を歩いていたら、違和感を覚えます。
なぜなら、日本人の生活では服を着て生活するのが文化であり、常識だからです。
大人が既に当たり前と思っているこのような感覚、実は乳幼児期に身につけていく感覚なのです。
それぞれの国の文化で用意すべき秩序環境が変わります。
自国の文化を常識として身につけるのが、この秩序の敏感期の大きな役割であり、特徴とも言えますね。
秩序の敏感期における大人の役割とは
秩序の敏感期における大人の役割とは、一貫性を持たせた環境作りをすることにあります。
一貫性を持たせた環境とは具体的に言うと
- 物の位置
- 物の使い方
- 場所
- 時間
- 人
- 手段・道具
- 手順
- 規則・ルール
- スケジュール
- 子どもに接する態度
- 声がけの仕方 など
このようなものが、一定の法則性を持っている状態に保つことにあります。
子どもたちは、秩序の形を認識するために必死です。
秩序の感覚は身近な周囲の環境により育てられます。
モンテッソーリ理論ではよく、外的秩序が内的秩序を構築すると言われています。
つまり、身の回りの環境が一定になっていれば、それを見本として、秩序(常識)を理解することができるという解釈です。
おわりに
「秩序の敏感期」は、子どもの成長と発達において非常に重要な時期であり、彼らが環境を理解し、安心して自己を構築するための基盤となります。
大人は、子どものこの敏感期を理解し、適切な環境を提供することで、子どもが健やかに成長できるようサポートすることが求められます。
この時期に秩序を守り、適切な環境を提供することは、子どもの精神的な安定を支え、後の自己形成や社会的発達に大きな影響を与えるでしょう。