多くの家庭で「おうちモンテ」として実践されている中でも、環境作りとして、モンテッソーリ棚の需要は高いです。
安いものはないか?おすすめのものはないか?など血眼になってる印象です。
しかしながら、「モンテッソーリ棚」は本当に家庭で必要なのでしょうか?
今回は、おうちモンテでのモンテッソーリ棚の必要性について考察していきます。
モンテッソーリ棚の目的とは?
モンテッソーリ教育は集団活動が前提である環境で提供されることが多く、幼稚園や保育園などで一般的に使われます。
そこで、多くの子どもが同じ空間で活動するため、教具を共有するための秩序作りの機能としてモンテッソーリ棚が必要なのです。
たくさんの乳幼児が集まるわけですが、共に生活するためには、物の置き場が一定でなければなりません。
そもそも、モンテッソーリ園は、「子どもの家」というくらい、子どもにとって、第二の家であることを思い浮かべるような場所です。
元々、生活をする空間ではない(居住スペースではない)場所に、ある種の家のような安心感の持てる秩序を作ろうとしているわけですから、そのために様々なコーナーが設けられていますね。
しかし、家庭では、家庭のルールがあり、生活に基づいた秩序が自然に存在しているため、わざわざ園のように棚を使ってまで作る厳密な秩序は必要ないと考えられます。
もちろん、大人が作り出した大人にとって快適な秩序環境であるため、子どもに配慮した形での修正は必要です。
ですが、この場合、重要なのはモンテッソーリ棚ではないことを強調しておきます。
大切なのは、秩序立った環境を作ることなんです。
家庭における自然な秩序とモンテッソーリの原則
モンテッソーリ教育では、「秩序感」を持つことが子どもの成長に必要不可欠であるとされています。
この秩序感は、子どもが自分の環境の中で安定感を持ち、安心して学びに集中するための基盤となります。
しかし、家庭環境には日々の生活習慣を通して、自然な秩序が既に形成されています。
例えば、おもちゃの収納場所、食事の時間、身支度の流れなどが家庭ごとのルールとして存在し、これが日常生活の中で子どもに秩序を提供します。
また、モンテッソーリ教育において「環境の準備」が重要ですが、何もかも買い揃えて新しい環境作りをするのではなく、家庭の場合は既存のインテリアや収納を利用しつつ、子どもが日常の中で自然に選択と自立を学べるよう工夫することが重要です。
家庭では、日常生活の中で自律的な行動が育まれやすい環境が自然と整っています。
例えば、
- 子どもが食器を自分で片付ける
- 洋服を自分で選んで身につける
- 子どもが自分で食材を切って料理をする
- 親子一緒に買い物をする など
家庭での習慣がそのまま学びの場となります。
こうした活動は、モンテッソーリ教育が求める「自立」と「責任感」を育む機会となります。
モンテッソーリ棚は物理的な秩序を与えますが、家庭では必ずしもそれが必要でない場合が多いのです。
むしろ、棚に頼らずに、日常生活全体の活動を通して自然に身に付く秩序や自立性が、子どもの成長には効果的であると考えられます。
おうちモンテで大切なのは「子どもの選択と自律」を促す工夫
モンテッソーリ棚が無くても、おうちモンテを効果的に実践するためには、子どもが自ら選択し、自立的に行動できる環境づくりが重要です。
- 収納場所や遊びのエリアを明確にする
- 子どもの手の届く位置に必要なものを配置する
- 子どもの目線を意識する
- 物の位置をころころ変えない
- 物の置き方を密にしない
- 見える位置に見える状態で物を置く
- 子どもが一人で解決できる動線の確保 など
このようなポイントが、おうちモンテを成功させる鍵となります。
棚を使わなくても、子どもが自分で整理整頓しやすい環境が整っていれば、家庭内でのモンテッソーリ教育は十分に実現可能です。
おわりに
おうちモンテには、家庭に自然と備わる秩序や柔軟な環境調整があるため、モンテッソーリ棚は必ずしも必要ありません。
本格的な棚は2、3万円〜が一般的ですし、設置するための場所も大きく取ります。
もちろん、特別な活動道具を用意し、それをいくつか置かなければならないのであれば、棚によって縦に空間が活かせるので、活用するのもありでしょう。
モンテッソーリ園という保育施設であればモンテッソーリ理論を忠実に再現する必要があり、教具数が多く、置き場所が確保できないため、この棚の設置も必然になって来ます。
ですが、モンテッソーリ教育の本質は、子どもの自立と自律性を育むことにあるということ、そして、秩序感を守ることです。
フランスの歴史あるモンテッソーリ園では、よく見るようなモンテッソーリ棚ではなく、壁に支えとなる部品を打ち込んで、簡単に板を乗せたような棚を使っていました。
いつの間にか日本でのおうちモンテでは、棚に大金をかけないと実現できないような教育法のように広まってしまっていますが、本当の役割さえ把握していれば、ここで大金をはたく必要はありません。
ぜひ、モンテッソーリ棚に固執せず、他の環境整備にお金を使いましょう。