- モンテッソーリ教育の内容って時代に適応できていないのでは?
- 100年前の古い教育法でしょう?
- プログラミングの時代にアナログな教育法ってどうなの?
モンテッソーリ教育が日本で有名になって広まりを見せたのはここ10年の話です。
将棋の藤井聡太さんが火付け役となったわけですが、実は、モンテッソーリ教育とは、100年以上も前から存在する古い教育法なのはご存知でしょうか?
ともなると、時代に合ってない教育法なのではないかと不安になる親の皆さんもいると思います。
モンテッソーリ教育は良いものだと思っていたけど、時代に取り残された教育をするのは避けたい。
実際に、時代遅れなのか、今の時代では使えない教育法なのか?
結論を先にお伝えすると、モンテッソーリ教育のメソッドは、どれだけ時代が変わろうとも時代遅れになることはありません。
モンテッソーリ理論を踏まえながら解説していきます。

・幼児教室指導員
・おもちゃコンサルタント
・知育玩具アドバイザー
・国際モンテッソーリ資格 etc.
3歳子育て中 1児の母。モンテッソーリ教育に対して最初は懐疑的だったが理論を学ぶうちに解釈が変わる。教具よりもメソッドを中心に研究。分かりやすい解説をシェアしたい。
モンテッソーリ教育は100年以上前からある教育法
モンテッソーリ教育は、1907年にイタリアの医学博士マリア・モンテッソーリによって考案されました。
もともとは知的障害児の教育を目的に開発され、その後、一般の子どもにも応用されるようになった教育法です。
この教育法は、「子どもは自ら学ぶ力を持っている」という考えに基づき、自由に選べる教具を使って自主的に学ぶ ことを重視しており、今の時代のニーズに合致しているように見えます。
しかし、100年以上前に生まれた教育法であるため、「今の時代に合っていないのでは?」 という意見が出ることもあります。
モンテッソーリ教育は昔ながらの変わらぬアナログなやり方が特徴
モンテッソーリ教育は、長年にわたって基本的な方法がほとんど変わっていません。
- 個別の発達に合わせた個人学習
- 教具を使った具体物での学び
- 自己による修正の重視
- 異年齢混合クラス
このように、モンテッソーリ教育は「環境を整え、子どもが自ら学べるようにする」 という姿勢を一貫して守っています。
しかし、時代の変化に応じて教育のあり方が進化する中、「新しい教育トレンドと比べると古いのでは?」 という見方もあるのです。
現代の教育トレンドとモンテッソーリ教育の違い
最近では、次のような教育法が注目されています。
- プロジェクト型学習(PBL):チームで課題を解決する学習法。
- STEAM教育:科学・技術・工学・アート・数学を統合した学び。
- ICT教育:タブレットやAIを活用した学習。
- 探究学習:決められた答えではなく、自分で考えて学ぶ学習。
これらの教育法とモンテッソーリ教育を比較すると、次のような違いがあります。
教育法 | 特徴 | 学習方法 | 技術の活用 |
モンテッソーリ教育 | 自由に選ぶ個別学習 | 具体的な教具を使った体験型 | アナログ(手作業が中心) |
PBL(プロジェクト型学習) | チームで課題解決 | グループワーク・発表が多い | デジタルツールを活用 |
STEAM教育 | 創造力を重視 | プログラミングやデザイン思考 | 最新技術を取り入れる |
ICT教育 | 効率的な学習 | AIやオンライン教材 | タブレット・PCを活用 |
モンテッソーリ教育は、最新技術をあまり活用せず、伝統的な学習方法を守っている点が「時代遅れ」と言われる要因 になっています。
モンテッソーリ教育は「手を使ったアナログな学び」が基本
数を学ぶときには、アプリではなく、ビーズや棒などの実物を使った形で行います。
文字を書くときには、タブレットではなく砂文字板や筆記具を使い、科学の概念を学ぶとき、動画ではなく実際の実験や観察を重視する。
すべて「手を動かすこと」「実物を用いること」に重きを置くのが特徴です。
現代教育は「デジタルツール」を活用
現在、タブレットやオンライン教材を使用し、デジタルツールを活用した学習が可能です。
AIやVRを活用した 没入型の学びも増えており、データ分析を用いた個別最適化学習(Adaptive Learning)が進んでいます。
モンテッソーリ教育は「昔ながらのアナログな学び」が中心なのに対し、現代の教育は「最新テクノロジーを活用した効率的な学び」を重視しており、科学技術の活用有無が、時代遅れを感じさせるポイントだと考えられます。
モンテッソーリ教育でアナログなアプローチを重視する理由とは?
現代の教育では、タブレットやオンライン教材を使ったデジタル学習が進んでいます。
しかし、モンテッソーリ教育では、今もなお 、手を使った実体験 を大切にし、アナログなアプローチを採用しています。

なぜデジタルではなく、アナログな学びが重要なの?



それは、乳幼児期の発達段階において「リアルな体験」が不可欠だからです。
モンテッソーリ教育では、子どもが 「手を動かして、実際に体験しながら学ぶこと」 を重視します。
その理由を、乳幼児期の特徴とともに詳しく解説します。
乳幼児期の発達段階に合わせた学習方法
乳幼児期(0〜6歳)は、知識も経験もゼロからのスタート。



当然のことですが、生まれた瞬間から、この世界の知識があらかじめ身についているという人はいませんよね?
この時期の子どもは、世の中の仕組みを学ぶため「現実の世界にあるもの」 を直接触れながら理解していきます。
例えば、以下のような場面を考えてみましょう。
学びのテーマ(例) | アナログ(実体験) | デジタル(画面学習) |
---|---|---|
数の概念 | ビーズを触りながら「1,2,3…」 | 画面の数字をタップ |
重さの違い | 実際に持ち上げて比べる | 画面のイラストで比較 |
動物の特徴 | 本物の犬を触る・鳴き声を聞く | 動画を見る |
味の違い | りんごジュースとオレンジジュースを飲み比べる | 動画を見る |



例えば、味の違いで想像してみてください。
もしも目隠しをした状態で、りんごジュースとオレンジジュースを飲み比べることになったとしたら?
アナログ学習とデジタル学習で学んだどちらの子の方がジュースの名前を的確に当てられるようになると思いますか?



もちろん、アナログ学習ですね?見たことしかないものの味を、りんごの味だ、オレンジの味だ、と分かるはずがないのです。
ゆえに、乳幼児期の学習には、現実世界での「直接体験」が何よりも大切なのです。



デジタル学習に移るのは、この現実世界の土台が出来てから、というのがモンテッソーリ教育の考えです。
モンテッソーリ教育では、この発達段階に合わせた学びを提供するために、デジタルではなくアナログなアプローチを採用しています。
乳幼児期の発達の特徴を知ると、アナログアプローチが必要な理由が、より明確に分かります。
乳幼児期の特徴をいくつか見ていきましょう。
乳幼児期の特徴①:想像力が未発達
大人は 「リンゴ」 と聞くと、赤くて丸い果物をすぐに思い浮かべることができます。
しかし、乳幼児は 「見たことがないものを頭の中で思い浮かべる力(想像力)」 が未発達です。
そのため、「画面上のリンゴ」と「本物のリンゴ」が同じものだと理解するのは難しい のです。
例えば、画面に映る「猫の動画」だけでは、本物の猫の感触や重さは分からない。
「水の映像」だけでは、冷たさや流れる感覚を実感できない。
モンテッソーリ教育では、想像力が育つ前の時期には、まず 五感情報を伴うリアルな体験を優先することが大切だと考えられています。
乳幼児期の特徴②:因果関係の経験値不足
乳幼児は、「○○をすると××になる」という因果関係の理解がまだ未熟 です。
例えば、
- 「コップを倒すと水がこぼれる」
- 「ドアを強く閉めると大きな音が鳴る」
- 「ボールを転がすと遠くまで行く」
こうした 「自分の行動と結果」をつなげて理解するためには、実際に体験することが必須 です。
デジタル画面では、実際に手を動かして確かめることができません。
モンテッソーリ教育では、子どもが 「自分で試して、結果を確かめる」 ことを大切にし、アナログな学びを取り入れています。
乳幼児期の特徴③:世の中のルール(ことわり)を知らない
大人は「鉛筆は書くもの」「スプーンは食べるもの」といったルールを知っていますが、それは自分が実際に使ってみた経験による物です。
乳幼児にとってはまだ、身の回りにあるものすべてが未知の世界であり、知らないことだらけ。
そのため、実際に触れて、経験しながらルールを学んでいく必要があります。
例えば、
- 「水は手ですくえないけど、スプーンならすくえる」
- 「砂は崩れるけど、積み木は積み上げられる」
- 「ガラスは固いけど、紙は破れる」
こうした世の中の仕組みを理解するためには、実物に触れて体験することが不可欠です。
モンテッソーリ教育では、実際の物を使って 「手を動かしながら学ぶ」 環境を整えています。
乳幼児期の特徴④:五感体験が未熟
赤ちゃんは生まれたとき、視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚といった 五感が未発達 の状態です。
そのため、五感をフル活用して世界を理解する時期に、画面だけの学習では足りない のです。
五感を使った学びの例
- 視覚:色や形の違いを観察(実際の果物・花など)
- 触覚:ザラザラ・ツルツルの感触を経験(砂・布・木の違い)
- 聴覚:本物の鳥の鳴き声を聞く(実際の公園で体験)
- 味覚:酸っぱい・甘いを味わう(本物の果物で実験)
- 嗅覚:花や食べ物の香りを嗅ぐ(実際のにおいを体験)
デジタル学習では、視覚と聴覚しか使えないため、五感をフル活用した体験ができません。
モンテッソーリ教育では、五感を通じたリアルな学び を提供するため、アナログな活動を重視しています。
アナログな学びは、子どもが世界を理解するために必要」なものです。
モンテッソーリ教育が 「アナログな学び」にこだわるのは、子どもの発達にとってそれが最適だからです。



デジタルが悪いわけではなく、まずは「リアルな体験」を積み重ねることが先なのだと考えられています。
モンテッソーリ教育がどんなに古い教育法でも時代遅れにならない理由とは?
モンテッソーリ教育は最新の技術を活用しないアプローチをとっているため、時代遅れだと感じる人がいるのは事実です。
ですが、学習の本質は異なります。
「最新技術を取り入れていない=時代遅れ」なのでしょうか?
最新の科学技術を使うことこそが最善だというのは間違った認識です。
最新技術は生活を豊かにする発展ツールですが、それは、ある程度、心身が育った人間が使うと最適なものになりますが、乳幼児期の子どもにとっては、発達が視覚聴覚情報に偏った成長を促してしまいます。
その他の感覚は置き去りになってしまいます。



そうではなく、五感全ての情報を活用する方法をまず知るため、アナログアプローチが必要です。
ゆえに、モンテッソーリ教育の考え方は、人間という生物自体が大変化をしない限り、どんな時代でも通用すると考えられます。
まとめ
モンテッソーリ教育は「アナログな学び」が中心で、デジタル活用が少ない点が「時代遅れ」と見られることがあります。
しかし、「自主性を育てる・実体験を重視する」など、現代にも通じる本質的な教育哲学があり、アナログな学びというものは、そもそも、学びの原点です。
つまり、モンテッソーリ教育は最新の教育スタイルとは異なるものの、時代を超えて価値がある教育法と言えるのではないでしょうか?
どれだけ時代が変化をしようとも、モンテッソーリ教育のアプローチは学習の原点であるため、トレンドの影響を受けません。