モンテッソーリ教育法の中でも、「文化教育」ってとても情報が少ないですよね?
どんな教具を使って、どんな内容を学んでいるのでしょうか。

文化教育についてまとめてみました。


・幼児教室指導員
・おもちゃコンサルタント
・知育玩具アドバイザー
・国際モンテッソーリ資格 etc.
3歳子育て中 1児の母。モンテッソーリ教育に対して最初は懐疑的だったが理論を学ぶうちに解釈が変わる。教具よりもメソッドを中心に研究。分かりやすい解説をシェアしたい。
モンテッソーリ教育での文化教育とは
『文化教育』は、「ことば」と「数」以外の子どもの興味を対象とした幅広い分野です。歴史、地理、地学、動・植物など、小学校の社会科、理科に相当する分野を扱います。子どもの知りたいという要求に応え、興味の種を可能な限り多く蒔くことを目的とします。ほかの4分野が統合された総合学習としても考えられます。
日本モンテッソーリ教育綜合研究所
モンテッソーリ教育における「文化教育」は、単に知識を教えるものではなく、広い意味での「文化」に触れることを通じて、子どもが自分自身や他者、自然、社会について深い理解を得ることを促すものです。
この文化教育は、歴史、地理、科学、芸術など、さまざまな学問領域を網羅しており、特定の文化に限定されることなく、グローバルな視点から人間の共通性と多様性を学びます。
子どもが異なる文化に対して柔軟で寛容な姿勢を持つことを目的としていますが、同時に自分自身の文化に対する理解と誇りを深めることも促します。
文化の学習を通して個々のアイデンティティの確立を支援し、異なる価値観や習慣を受け入れる力を育てることを目指しています。



具体的な内容をご紹介します。
地理
モンテッソーリ教育では、地理の学習を通じて、子どもたちに世界の多様性や地球の構造を理解させます。
子どもたちが地球や地理的概念を視覚的・触覚的に理解できるよう、さまざまな教具が使用されます。
以下に主な教具とその特徴をまとめました。
サンドペーパー地球儀(Sandpaper Globe)
地球儀の大陸部分の表面をサンドペーパーで覆い、陸地と海洋を触覚的に区別できるようにした地球儀です。これにより、子どもたちは地球の基本的な構造を感覚的に学ぶことができます。
大陸地球儀(Continents Globe)
各大陸を異なる色で示した地球儀で、子どもたちは視覚的に大陸の位置や形を学びます。色分けにより、各大陸の識別が容易になります。
陸と水の形(Land and Water Forms)
湖や島、湾や半島など、さまざまな地形の模型を用いて、陸地と水域の関係や地形の種類を学びます。これらの模型は、水を注いで実際に触れたりすることで、子どもたちの理解を深めます。
パズル地図(Puzzle Maps)
各大陸や国をピースとして取り外し可能なパズル形式の地図です。子どもたちは遊びながら地理的な配置や国の形状を学ぶことができます。
世界の旗セット(Flags of the World)
各国の国旗カードや小さな旗を用いて、国とそのシンボルである旗を結びつけて学びます。これにより、文化的な多様性や国際的な理解を促進します。



これらの教具を通じて、子どもたちは地理的な概念を視覚や触覚を通じて具体的に学び、世界への興味や理解を深めていきます。
歴史
子どもたちは、誕生日や個人のタイムライン、家系図、季節の移り変わりを通じて、時間の経過や自分の歴史を学びます。これにより、自己認識や時間の概念を育みます。
モンテッソーリ教育における3~6歳の歴史教育では、子どもたちが時間の概念や自身の歴史を理解するための教具が使用されます。これらの教具は、子どもたちの知的好奇心を刺激し、過去を発見する旅へと誘います。
時間の概念の導入
時計の教具
時計の教具を使って、時間の読み方や経過を学びます。
カレンダー活動
日付や曜日、月の概念を理解するためにカレンダーを使用します。
個人の歴史の理解
誕生日のお祝い
子どもの誕生日を祝うことで、年齢や時間の経過を実感します。
個人のタイムライン作成
自身の成長や重要な出来事を時系列で整理し、視覚的に理解します。
季節と自然のサイクル
季節の変化の観察
季節ごとの自然の変化を観察し、四季のサイクルを学びます。
自然カレンダーの作成
季節ごとのイベントや自然現象を記録するカレンダーを作成します。



これらの活動を通じて、子どもたちは時間の流れや自身の歴史、そして自然界のサイクルについての理解を深めます。
動物学
生物と無生物、植物と動物の違い、教室内の動物の世話、動物の五大分類(哺乳類、鳥類、魚類、爬虫類、両生類)などを学びます。これにより、生命への理解と尊重の心を育てます。
子どもたちが動物の特徴や分類、生活環境などを視覚的・触覚的に理解できるよう、さまざまな教具が使用されます。
動物のパズル
動物の形や骨格を模した木製パズルで、各部位を組み立てることで、動物の構造や体の部位を学びます。例えば、クマの着せ替えパズルなどがあります。
動物の分類カード(3-part card)
動物の写真や名称、特徴を示したカードセットで、子どもたちはこれらを組み合わせることで、動物の分類や特徴を学びます。
動物のライフサイクルカード
動物の成長過程を示したカードで、卵から成体までの変化を視覚的に理解します。これにより、生命の循環や成長の過程を学ぶことができます。
動物の分類チャート
動物界の分類(哺乳類、鳥類、爬虫類など)を視覚的に示したチャートで、子どもたちは動物の多様性や分類方法を学びます。The Learning Arkでは、動物の分類に関する教材を提供しています。
拡大鏡と観察カード
拡大鏡と組み合わせて使用する観察カードで、子どもたちは実際の動物やその部分を詳細に観察し、理解を深めます。



これらの教具を通じて、子どもたちは動物の特徴や分類、成長過程などを具体的に学び、自然界への興味や理解を深めていきます。
植物学
植物の役割や目的、生態系における重要性を学びます。実際の植物を使用して、その構造や機能を探求します。
子どもたちが植物の構造や成長過程、分類などを視覚的・触覚的に理解できるよう、さまざまな教具が使用されます。
植物のパズル
葉、花、木などの各部分を示したパズルで、各部位を取り外し可能なデザインになっています。これにより、子どもたちは植物の構造や各部分の名称を学ぶことができます。
植物の分類カード(3-part card)
植物の写真、名称、特徴を示したカードセットで、子どもたちはこれらを組み合わせることで、植物の分類や特徴を学びます。
植物の世話
実際の植物を育てる活動を通じて、子どもたちは植物の成長過程や世話の方法を学びます。
植物のライフサイクルカード
植物の成長過程(種子から成木まで)を示したカードで、子どもたちは植物のライフサイクルを視覚的に理解します。
植物の分類チャート
植物界の分類(種子植物、シダ植物、コケ植物など)を視覚的に示したチャートで、子どもたちは植物の多様性や分類方法を学びます。



これらの教具を通じて、子どもたちは植物の構造や成長過程、分類などを具体的に学び、自然界への興味や理解を深めていきます。
科学
モンテッソーリ教育では、子どもたちが実験を通じて、磁性、浮力、蒸発、化学反応、光と色などの自然の法則を体験的に学びます。これにより、探求心や科学的思考を育てます。



まさに理科の実験みたいなことをするわけですね。
アイデンティティの確立とモンテッソーリ教育


モンテッソーリ教育は、子どもが自らのアイデンティティを確立するためのプロセスを大切にします。



アイデンティティとは、「自分が何者であるのか」という認識のことです。
文化と密接に関係してくるのが、このアイデンティティです。
これは自己の内面的な認識だけでなく、他者や社会との関わりの中で形成されるもので、特に日本では、集団との調和や役割分担を通じて形成されます。
モンテッソーリの「環境」と呼ばれる学習空間は、子どもが自分自身のペースで学び、探索し、発見できるように設計されています。
この自発的な学習体験が、子どもたちに自己の興味や価値観を発見し、それに基づいて自分自身を形作る力を与えるのです。
また、教師の役割は、子どもたちが自らのアイデンティティを探求するプロセスを支援し、必要に応じて適切な指導を行う「ガイド」として機能します。
日本における「文化教育」とアイデンティティ


日本の幼児教育環境においても、一般的に見て、文化教育は重要な位置を占めています。
たとえば、日本の文化教育の一環として、季節の変化や伝統行事、地域の風習に触れることが重要視されていますよね。
日本社会では、集団の調和や他者との協力が重視される傾向が強いですが、モンテッソーリ教育では、個人の内面的な成長と自己の確立にも焦点を当てています。
こうした活動は、子どもが自分自身の過ごす国の文化に対する理解を深め、地域社会とのつながりを感じるきっかけとなります。
また、モンテッソーリの理論では、子どもが「感覚教育」や「日常生活の練習」を通じて文化を体験的に学ぶことが強調されており、これが日本における伝統文化の体験と密接に関連しています。
- 箸を使うこと
- 家屋に入る際には靴を脱ぐこと
- ひらがなやカタカナ、漢字などの文字
私たち大人にとって当たり前となっている伝統的な習慣や価値観においても文化の一部と捉えます。



宗教についても、文化的な違いがありますね。
モンテッソーリ教育での文化教育の方法とは
『文化教育』は、「言語教育」と「数教育」以外のすべてが対象となっています。
感覚教育では五感の知覚を学び、言語と数を学ぶことにより論理的思考をはぐくむことで、知識を発展させる基礎力が育ちます。
それらの力を総合的に使い、知識を発展させるのが文化教育です。
例えば、自国の文化を知る、世界の文化を知る、自然の摂理をする、カレンダーを知る、時間(時計)を知る…
地球でどこに自分がいるのか?そんなことも次第に知りたくなります。
子どもの好奇心は大きく膨らみ、世の中の色んなことが知りたくなっていきます。
日常の中で接する応用的な知識と活動は全て文化教育に該当します。
これらの知識は、感覚・言語・数といった基礎的な力が育っていないと、身につけていくことが出来ない発展できない内容です。



文化教育においても、乳幼児期においては具体物を用いた形で必ず学びます。
数教育の時にもお伝えした通り、この時期の学びは、常に具体物を用いて行うのです。


世界のことを学ぶのであれば実際に地球儀を用いて、どの位置にあるどの国の話なのかが分かるように。
自然の摂理を学ぶのであれば、その摂理を実感できる方法を用います。
動植物のことを学ぶのであれば、実物あるいは図鑑などが必要です。
子どもたちの想像力はまだ未発達なので、具体物を用いてサポートすることにより、学びやすくなります。
※ただし、情報が多すぎるサポートは逆に妨害になることもあるので匙加減注意!



頭の中で想像させることももちろん練習として必要ですが、乳幼児期の子どもたちにはまだまだ具体物の助けが必要です。
おわりに
モンテッソーリ教育における「文化教育」は、子どもたちが自分自身の文化的ルーツを理解し、他者との違いを尊重する力を育てることを目指しています。
この文化教育が個人のアイデンティティの確立に大きく寄与しており、伝統的な価値観と国際的な視野のバランスを取る教育として重要視されています。

