赤ちゃんが生まれて間もない頃は、目で見るものや手で触るものを通して世界を学びます。
モンテッソーリ教育では、赤ちゃんの発達段階に合わせて使用する教具が重要とされ、その代表例がモビールです。

見るモビールと触るモビールがありますが、この記事では、まず、見るモビールを紹介!
この記事では、モンテッソーリ教育におけるモビールの役割、種類、使い方、そして、どのような効果があるのかを詳しく解説します。
モビールの吊るし方については下の記事でまとめています。


モンテッソーリ教育で使うモビールの目的とは?


モンテッソーリ教育で用いられる第一のモビール(mobile)は、赤ちゃんの視覚や運動機能の発達を促すために設計されたものです。



一番初めに使われるモビールの目的は見る力を育てることです。
単に見る力といっても、色んなスキルが必要です。
- 色の違いを見分ける
- 焦点を合わせる
- 動くものを目で追う
これらの機能が赤ちゃんはまだ未熟です。
赤ちゃんの視覚の発達に合わせて、モビールを設置していきますが、そのためには、大人がまず、赤ちゃんの視覚の発達の流れを知る必要があります。
赤ちゃんの視覚の発達の流れ
赤ちゃんの視覚発達は生後数か月を通じて急速に進み、環境との相互作用がその発達に大きな役割を果たします。
視覚発達の流れを簡潔にまとめました。
これらの発達段階は一般的な目安であり、個人差があります。赤ちゃんの視覚発達を促すためには、年齢や発達段階に応じた適切な刺激や環境を提供することが重要です。
0~1か月:ぼんやりとした視界
新生児の視力は非常に弱く、視覚の焦点は30cm程度に限定されています(授乳中の母親の顔を見るのに適した距離)。
特に高コントラストな色(白・黒・赤)を識別しやすいとされてい時期で、淡い色や低コントラストの色の区別はまだ難しい段階です。
目の筋肉がまだ発達していないため、両目で同じ対象を追うことは難しいです。
- モノクロやコントラストの高いものを好む。
- 輪郭がはっきりした形(顔など)に興味を示す。
1~2か月:動くものに注目
少しずつ焦点を合わせられるようになり、視覚の範囲が広がります。
目と手の協調性が始まります(視線で追った後、手を伸ばそうとする)。
- 動く物体や顔により強く反応する。
- コントラストが強いモビールやパターンを好む。
2~4か月:色の認識が始まる
視覚の焦点がさらにはっきりし、約30cm以上離れたものも見えるようになります。
生後2か月頃から赤・青・黄色の識別が可能になり、4~6か月頃にはより多くの色を認識できるようになります。
視覚と動作の連携が向上し、動く物体をよりスムーズに追えるように。
- 赤、青、黄色などの基本的な色を識別できるようになる。
- モノクロからカラフルな物への興味が高まる。
4~6か月:深さの認識(奥行き感覚)の発達
視覚の解像度が向上し、物体をより細かく観察できるようになります。
赤ちゃんの視覚機能は、生後数ヶ月から数年にわたり段階的に発達します。特に、奥行きの認識や立体視、空間認識能力の発達には以下のような流れがあります。
生後3~4ヶ月頃:両眼視の発達: 両目で見た情報を脳内で統合する能力(両眼視)が発達し始めます。
生後4~6ヶ月頃:立体視の急速な発達: 物体を立体的に捉える能力(立体視)が急速に発達します。
4~6か月頃になると、両目を協調させて物を見られるようになり、奥行きや距離をある程度認識できるようになります。この時期には、手を伸ばして物を掴む動作(リーチング)が増え、視覚と運動の連携が進みます。
自分の周囲にある物をより詳しく観察するようになり、鏡に映った自分の姿に興味を示します。
- 奥行きや距離をある程度認識するようになる。
- 手に届く距離の物を掴むための視覚的な調整ができる。
6~12か月:細かい違いが分かる視覚能力
生後6~12か月になると、視力は0.1~0.25程度まで発達し、動くものを目で追う能力も向上します。
また、色の識別能力がさらに発達し、細かいパターンや形の違いにも気づけるようになります。
視覚と体の動きが連携します(例えば、物を見ながら掴む)。
- 細かい物体やパターンを識別できる。
- 色の識別能力がさらに向上し、より複雑な色の違いを認識可能。



視覚発達は個人差が大きいものの、これらのステージを目安に、赤ちゃんの成長を観察しながら適切な環境を整えることが重要です。
モンテッソーリ・視覚モビールの種類とは?
見るモビール(Visual Mobiles)
誕生~生後4、5か月頃に使用され、視覚の発達を促します。
ムナリ・モビール(Munari Mobile)


対象月齢:誕生直後〜
生まれたばかりの赤ちゃんは、白と黒、そしてグレーの濃淡を見ることができます。
そこで、白と黒を使ったコントラストがはっきりした色合いの幾何学模様を用いて、新生児でも見やすく設計されたムナリ・モビールを使用します。
透明球はバランスを保つのに役立ち、光を反射します。
- 集中力と注意力を養う
- 焦点を合わせる力を養う
- 追視の力を養う
- 目の筋肉が強化される


八面体モビール(Octahedron Mobile)


対象月齢:生後6週〜
赤・青・黄の鮮やかな原色を使った八面体のモビール。
色の識別ができ始めた赤ちゃんに、色彩感覚を育むためのモビールです。
メタリックな色を用いることにより、光の反射が乳児にとって魅力的に映ります。
- 集中力と注意力を養う
- 焦点を合わせる力を養う
- 追視の力を養う
- 目の筋肉と首の筋肉を強化する


ゴッビ・モビール(Gobbi Mobile)


対象月齢:生後7週~
同系色の球体がグラデーションで並んだモビール。色が徐々に変化しているのが特徴です。
微細な変化を認識できるようになった赤ちゃんに適しており、視覚の鋭敏さを高めます。
赤ちゃんが球体の動きを目で追うことで、視覚的な集中力が向上します。
赤ちゃんに近い色ほど暗く、離れて行くほど明るくなる形で色が配置されています。
- 視覚的な識別スキルを繊細に伸ばす
- 追視する力を養う
- 集中力と注意力を養う
- 目の筋肉と首の筋肉を強化する
設置のポイント: 球体が少しゆっくり動くように吊るします。風があたる場所ではなく、自然な揺れが起きる程度の環境が理想です。


ダンサーモビール(Dancers Mobile)


対象月齢:生後8週~
軽やかに動く人型のパーツが含まれており、自由で複雑な動きをするモビール。
赤ちゃんが立体的な動きを楽しみながら、目で追う力を発達させます。
- 集中力と注意力を養う
- 焦点を合わせる力を養う
- 追視の力を養う
- 奥行きを知覚する力を養う
- 目の筋肉と首の筋肉を強化する
設置のポイント: 自然光が差し込む場所に吊るすと、光の反射とともに美しい動きが強調されます。


自然モビール(Nature Mobile)
写真準備中…
対象月齢:生後3ヶ月〜
本物の自然物(葉っぱ、小枝、貝殻、羽など)や、リアルな動植物の写真を吊るします。
軽やかに揺れる動きが赤ちゃんの視覚や追視の発達を助けます。
現実に基づいたものを見せるというモンテッソーリの理念に沿ったモビールです。
- 集中力と注意力を養う
- 焦点を合わせる力を養う
- 追視の力を養う
- 奥行きを知覚する力を養う
- 自然への興味
モンテッソーリ教育:モビールを切り替えるタイミングとは?
視覚モビールは、視覚を育てることが目的であるため、赤ちゃんに直接触らせません。



赤ちゃんが興味を失ったら次のモビールを紹介します。
赤ちゃんが興味をなくしたかを見分けるコツは、とにかく観察をして、行動を見守ること。
モビールではなく、部屋の中の他のものを探しているかもしれませんし、モビールの下に寝かせても、以前のように見上げなくなったら、次のものに移るサインです。
また、子供が手を伸ばして、見ることよりも触ることを求め始めた場合は、次のモンテッソーリモビール(触るモビール)に進むことをお勧めします。
モンテッソーリ教育:モビールは全種類必要?
興味を失ったら切り替えていくのがポイントです。
興味を失っていないのに適応時期だという理由で次々と切り替えていく必要はありません。
個人によって、それぞれのモビールに興味を持つ期間も違います。
全てのモビールを必ず使わなければならないということはありません。
興味を失ったら次に進む、というのがポイントです。



適応時期だけ見て次々と変えていく方法では、赤ちゃんの興味を無視した形の提供となります。
おわりに
モンテッソーリモビールは、赤ちゃんの発達段階に合わせて適切な視覚刺激を与え、成長を助ける優れた教育ツールです。
ムナリモビールから始まり、ゴッビモビールや触るモビールまで、赤ちゃんの成長に寄り添った使い方をすることで、視覚・運動機能の向上を促します。
赤ちゃんにとって安全で楽しい環境を整えるため、ぜひモンテッソーリ モビールを取り入れてみてください。

