モンテッソーリ教育では、子どもの発達に応じた環境を整え、自由に活動できるようにすることを大切にしています。
その中で、「ペグさし」は手指の発達を促す基本的な教具のひとつです。
ペグを穴に差し込む単純な動作ですが、実は脳と体の発達に重要な役割を果たします。
本記事では、ペグさしの役割や効果、年齢別の活用方法、選び方、家庭での取り入れ方について詳しく解説します。

・幼児教室指導員
・おもちゃコンサルタント
・知育玩具アドバイザー
・国際モンテッソーリ資格 etc.
3歳子育て中 1児の母。モンテッソーリ教育に対して最初は懐疑的だったが理論を学ぶうちに解釈が変わる。教具よりもメソッドを中心に研究。分かりやすい解説をシェアしたい。
モンテッソーリ教育で使うペグさしとは?

「ペグさし」は、小さな円柱状のピース(ペグ)を穴に差し込む教具です。
一般的なペグさしには以下のような種類があります。
- 単色のシンプルなペグさし(穴の数も少なく、幼児向け)
- カラフルなペグさし(色ごとに分ける要素が加わる)
- 高さ・大きさが異なるペグさし(長短や大小の概念を学ぶ)
- 形が異なるペグさし(丸・三角・四角などの形を認識する)
- 数を意識するペグさし(ペグボードが数と関連する)
これらの教具は、子どもの発達段階に合わせて使うことで、手指の発達だけでなく、認知能力や集中力の向上にもつながります。
モンテッソーリ教育での役割

モンテッソーリ教育では、「ペグさし」は 感覚教育 や日常生活の練習の一環として位置づけられています。
特に以下のようなスキルを育むために活用されます。
1. 手指の巧緻性(こうちせい)の発達
指先の細かい動きを鍛え、鉛筆を持つ準備をします。
つかむ、つまむ、押し込む動作を通じて、微細運動を発達させる運動です。
これらの動きは、大人になっていくにつれ、日常生活の中で必須となる動きであるため、とても汎用性のある活動。
2. 目と手の協応(コーディネーション)
目で穴の位置を確認しながら手を動かすことで、視覚と運動の連携を強化します。
これにより将来的に、ボタンをかける、箸を使う、文字を書く…といったスキルの基礎が養われる活動となるのです。
3. 集中力と持続力の向上
ペグを穴に差し込む単純な作業を繰り返すことで、集中力が養われます。
成功体験を積み重ねることで、持続的な作業への意欲が高まります。
4. 秩序感と論理的思考の育成
色や形ごとに分類することで、論理的な思考力が鍛えられます。
決められた手順を守ることで、秩序感が身につく仕組みです。
年齢別ペグさしの選び方・遊び方

- 安全性:誤飲しないサイズのものを選び、角が丸いものを使用する。
- 子どもの発達段階に合ったサイズ・形状:大きめのものから始め、徐々に細かいものへ移行する。
- シンプルなデザイン:過剰な装飾がない、モンテッソーリの原則に沿ったものを選ぶ。

市販のおもちゃの中から、モンテッソーリ理論に当てはまるものを探すのは非常に難しいです。
性質の孤立化が出来ておらず、どうしても、2つ以上の要素が組み合わさっています。
その中でも出来るだけ、要素が絞られてるものをご紹介してみます。
0歳後半~1歳:つかんで入れる感覚を養う
この時期の赤ちゃんは、まだ指先のコントロールが発達途中です。
ペグさしを導入する際は、 太めで短めのペグを使い、 穴が大きめのものを選びましょう。
- 大人が見本を見せ、子どもが自由にペグを握り、穴に差し込む動作を促す。
- 手のひら全体で握る(パームグリップ)から、指先を使う(ピンチグリップ)への移行をサポートする。
1歳~2歳:指先の動きを細かくする


この時期になると、親指・人差し指・中指を使ったつまむ動作ができるようになってきます。
ペグを細めにし、より指先の器用さを必要とするものを選びましょう。
- 色分けされたペグを使い、「赤の穴に赤のペグを入れる」といった遊びを取り入れる。
- ペグの本数を少しずつ増やし、集中力を養う。
2歳~3歳:分類や順序を学ぶ
この時期になると、物の違いや順序を理解する力がついてきます。
フレーベル館の玉さし盤は、モンテッソーリ教育の基本となる10進数との相性が良く、10×10のペグボードとなっています。
大きめのペグで三本指に持ちやすく、また、ペグを挿す際の抵抗感が少なく、スッとボードに入るので、子どものやる気を盛り上げてくれる感じです。



我が家が通っている子どもの家でも、このタイプのペグさしが置かれていました。
- 長さや太さの異なるペグを使い、「小さい順に並べる」「太い順に差し込む」といったルールを加える。
- 色ごとに分類する遊びを通して、色の認識力を高める。
- 穴のサイズが異なるボードを使い、「このペグはどこに入るかな?」と考えさせる。
数や色を意識


数に関しては低年齢向けで穴が少なめです。


10×10のペグボード内で活動することで、10進数への親和性が高いです。


列ではなく、まばらな状態での数のカウントを学んでいきます。子どもの家でも使用されています。


ペグを利用した数の教え方をモンテッソーリ公認教具販売会社が紹介しています。
論理的思考・想像力


ペグの穴が多いため、基礎的な動作を習得したのちに、発展的な活動が可能です。
色と大きさ


色や大きさの漸次性を学べます。
色と形


形に注目してペグさしできます。
6歳以降:論理的思考を育む
乳幼児期に培った感覚を統合していき、論理的思考を育んでいきます。
小学生以降のカウンティングボードとして、小さなペグのペグさしが使われます。


手先の巧緻性をより一層高めるのに、ペグも小さくし、より細かい作業も出来るようにサポートしていきましょう。


アイロンビーズも、ペグさしの一種と考えられます。
まとめ
モンテッソーリ教育における「ペグさし」は、 手指の巧緻性・目と手の協応・集中力・論理的思考 を育む重要な教具です。
家庭でも取り入れやすく、子どもの発達に応じて段階的にレベルアップさせることができます。大切なのは、 子どもが自分で考え、挑戦し、達成感を味わえる環境を作ること です。
家庭で取り入れる場合には
- 子どもが自分で取り出しやすい場所に置く。
- 1回に出すペグの数を調整し、過度な刺激を避ける。
- 遊び方を示したら、口出しせずに見守る。
おうちモンテッソーリの一環として、ぜひ「ペグさし」を取り入れてみてください!