モンテッソーリ教育は、子どもの成長と発達を4つの段階に分けて捉え、それぞれの段階に応じた教育を行うことを強調しています。
ゆえに、日本では幼児教育のイメージが強いモンテッソーリ教育ではありますが、実際、海外には、小学校、中学校、高校でもモンテッソーリ教育は存在するのです。
この「発達の4段階」は、マリア・モンテッソーリ博士が長年の観察と研究をもとに提唱した理論であり、子どもがどのように心と体が成長し、学びを進めていくかを理解する上で重要な指針となります。

モンテッソーリ教育を取り入れようと思うのであれば、必ず知っておきたい発達の流れを示すものです。
第1段階(0歳~6歳):「創造の時期」


最初の6年間は「創造の時期」と呼ばれ、子どもが自身の人格を形成する重要な時期です。
この段階の子どもたちは「感覚的な探究者」となり、実際に触れたり操作することを通じて学びます。
モンテッソーリ教育では、0〜6歳の時期を特に重視し、「吸収する精神」の時期と呼びますが、この段階はさらに「無意識の吸収」と「意識的な吸収」の2つのフェーズに分けられます。
吸収する精神
発達の第一段階において、子どもは「吸収精神」と呼ばれる能力を持っています。
これは、子どもが無意識のうちに周囲の環境から情報を吸収し、自分のものにする力です。
この吸収精神は、0歳から6歳までの間に最も強力に働き、特に最初の3年間が重要とされています。
この時期に吸収された情報は、後に子どもの人格形成や知的発達に大きな影響を与えます。
無意識的吸収期
0歳から3歳は、周囲の環境を無意識に吸収する「無意識の吸収期」であり、言葉や文化を自然に学び取ります。
子どもは周囲の環境や人々から無意識に情報を吸収し、感覚を通じて世界を理解し始めます。
意識的吸収期
3歳から6歳は「意識的な吸収期」となり、環境からの情報を意識的に取り込みながら、自らの知識を築き上げる段階です。
この時期の教育の鍵は、子どもが自由に探索できる環境を提供し、彼らの自発的な学びを支援することにあります 。


敏感期
「敏感期」と呼ばれる特定の期間に、言語や運動能力など、特定のスキルを急速に発達させる傾向があり、それに合わせた適切な環境と刺激が求められます。


感覚・印象の獲得と洗練
感覚的に、また、具体物を用いて、探究する時期です。
手で実際に触れたり、手で操作することで感覚や印象を自分の中に取り込みます。
獲得期
0〜3歳の間は、インプットの時期(獲得期)とされ、獲得した感覚の世界から、自分の体や周囲の世界を理解し始めます。
能力を創造する時期です。
洗練期
3〜6歳では、インプットされたものが洗練される時期(洗練期)、具体的な行動や能力として定着する時期です。
獲得期で得た能力をさらに高めます。
個性や人格の形成
この時期は、知性やその他の精神的な働きが形成される創造期です。
子どもはゼロから人格を創り出し、環境の中での経験を通じて自己を確立します。
モンテッソーリ博士は、無意識から意識への移行は、大人の直接的な介入ではなく、最適な環境を提供することで自然に進行すると強調しています。
この期間に無意識的に得た知識や能力は、やがて子どもの人格や知性の基盤となり、将来の意識的な活動を支えるものとなります。
第2段階(6歳~12歳):「知識の獲得と探究」


この段階では「文化の探究者」として、道徳的な問いにも向き合うようになります。
何が正しいのか、何が許容されるのかを考えながら、社会に適応するための基礎を築きます。
6歳から12歳の期間は、子どもが知識の探究を行い、論理的思考や抽象的な概念を学び始める時期です。
理由づける精神
この段階では、「理由づける精神」が芽生えます。
理性の働きが強くなり、物事の正しさ、善悪、不公平さに興味を持つようになります。
「知識の獲得と探究の時期」とされ、子どもは自然科学や社会科学、倫理、文化に興味を持ち、世界の仕組みを理解しようとする意欲を持ちます。
子どもたちは、周囲の現象に対して「なぜ?」と問いかけ、物事の背後にある理由を理解しようとします。
この知的好奇心が旺盛な時期に、モンテッソーリ教育では「コスミック教育」と呼ばれる包括的な教育方法を導入します。



これは、教科を横断して学ぶことで、世界や自然の仕組みを包括的に理解させることを目的としています。
社会性の発達
群本能が強くなり、群れることを好むようになります。
この時期の子どもたちは社会的なつながりを強く求めるようになり、社会的な関係を重視し、グループ活動を通じて共同作業を学ぶことが重要です。
グループでのプロジェクトや外部の専門家との交流を通じて、知識を深めることが推奨されます。
また、自己の責任感や独立心が養われます。
教育の役割は、子どもたちが自分で探究し、問題を解決するためのツールやリソースを提供することです 。
第3段階(12歳~18歳):「自己探求と自我の確立」


12歳から18歳の段階は、思春期にあたり、「自己探求と自我の確立」の時期です。
この段階の子どもたちは、「私が他の人たちと一緒に生きていけるように手伝ってください」という姿勢を持ち、友人や仲間との関係を重視しながら、社会に適応していく準備を進めます。
身体・精神・感情に大きな変化
思春期は、身体的、精神的、感情的に大きな変化が生じる時期です。
この段階の子どもは、身体的、感情的な変化を経験しながら、自分自身と社会における役割を模索します。
アイデンティティの形成
モンテッソーリ博士はこの時期を「第二の誕生」と表現し、青年が自己認識を深め、独立した個としての自我を形成することが重要であると強調しました。
この時期の特徴は、アイデンティティの形成と、社会への参加意識の高まりです。思春期の子どもたちは自立を強く求め、批判に対して敏感になるため、周囲からの理解と尊重が特に重要です。
理想に満ち溢れる時期
理想を抱き、社会問題に関心を持つことが多く、環境保護や動物福祉などの活動に参加することもあります。
社会的な実践の場が必要
特にこの時期は、社会的な実践や職業教育が重要視され、子どもが現実世界における自分の役割を探るための経験が求められます 。
モンテッソーリ教育では、この段階での子どもたちのニーズに応えるため、「農場学校」のような環境を提案します。
ここでは、実践的な学びや共同生活を通じて、社会的スキルや自立心を養います。
第4段階(18歳~24歳):「自己実現と成熟」


モンテッソーリ博士はこの時期を「私を社会に参加できるように手伝ってください」という言葉で象徴します。
青年期は、社会に出て自分の居場所を見つける段階です。
モンテッソーリ教育において特別な環境は用意されず、社会の中で自立するための準備期間とされています。
18歳から24歳は「自己実現と成熟」の時期であり、個人が自分の人生の目的を探求し、それに向けて行動を起こす段階です。
18歳以降は、法的に大人としての権利を得ることが多く、自分の役割や責任を自覚しながら生きることが求められます。
この時期は、自己の価値観や目標を明確にし、社会における自分の立ち位置を理解しながら、職業的、個人的な成熟を遂げます。
博士は、この時期においても教育が重要であり、特に高等教育や専門職に向けた実践的な学びが必要だとしています。
若者は、社会での責任を担う準備を進めながら、自己の理想と向き合い、社会に貢献できる大人へと成長します 。
おわりに
モンテッソーリ教育の「発達の4段階」は、それぞれの段階において、子どもが必要とする環境やサポートが異なるため、教育者はこれを理解し、子どもが自然に発達できるように支援することが求められます。
モンテッソーリ教育は、子どもが自己の力で学び、成長し、社会に貢献する大人へと育っていく過程を尊重する教育法です。
この理論は、今日でも多くの教育現場で取り入れられ、子どもの健全な発達を支える基盤となっています。



