「おうちモンテッソーリ」とは、家庭でモンテッソーリ教育の要素を取り入れた育児・教育法のことです。
近年、「おうちモンテッソーリ」としてモンテッソーリ教育の要素を取り入れる家庭が増えています。
残念ながら、モンテッソーリ教育の本質を理解されてはいないので、間違ったモンテッソーリ解釈が広まっているように見えます。
おうちモンテッソーリをする場合にも、正しい理論を学び、活用法を知ることが重要です。
本記事では、モンテッソーリ教育を専門機関で行う「モンテッソーリメソッド」と、家庭で行う「おうちモンテッソーリ」の違いについて詳しく解説します。
モンテッソーリ園とおうちモンテッソーリの違い
そもそもモンテッソーリ・メソッドは集団で行うモンテッソーリ園を想定して構成された内容となっています。
なので、集団で行った場合に効果的になる内容となっており、個人で全プロセスを行う設定にはなっていません。
つまり、そのままモンテッソーリ園でやってることをそのまま自宅でやろうとしても、機能しない部分があるということです。
その部分を意識して、おうちモンテッソーリで実践する場合には補足しなくてはなりません。
教具・道具の違い
モンテッソーリ園
科学的な観察に基づいて開発された教具が使用されます。
これらの教具は、子どもの五感や認知能力、運動能力を育成するためにデザインされており、特に自己訂正機能を備えている点が特徴です。
子どもは間違いを自分で気づき、正しい方法を習得することで自己成長を促します。
集中現象を起こすための精密さが備わっており、正常化へのサポート力が強いです。
おうちモンテッソーリ
家庭環境や手持ちの道具で教具を再現しようとすることが多いですが、一般的な道具ではモンテッソーリ教育での「自己訂正」機能を持たせることが難しい場合が多いです。
一見すると手作りで作れそうなものであっても、重さであったり寸法であったり、素材であったり、いろんな部分に意味のある仕掛けが隠されています。
手作りと公式な教具では集中力が圧倒的に違うというのも、実際に活動を観察しているモンテッソーリ園のガイドたちが口を揃えて言うくらい、精度が異なるものです。
そのため、家庭でのモンテッソーリ教育は、市販のモンテッソーリ教具を活用しながら実践する方法もありますが、教具が高額であるため、我が子のためだけに買い揃えるのは非常に困難です。
ゆえに、完全な再現は難しいということを理解する必要があります。
環境の違い
モンテッソーリ園
子どもが自分のペースで学べるよう整えられています。
家具の配置や教具の配置にも科学的な配慮がされており、子どもが自主的に行動し、秩序を学べるよう設計されています。
また、縦割保育という集団環境があるため、さまざまな教具を、さまざまなレベルの子が使う様子を目にすることから、予習と新しい興味となる刺激がいつも得られる状態です。
おうちモンテッソーリ
家庭の家具や生活空間を使うため、教室環境と異なる制約があります。
親が子どもの成長に合わせて必要な道具やスペースを整えることはできますが、園のように他の子どもと共同で学ぶことができないため、社会的な学びの側面が薄くなることがあります。
ルールの違い(秩序)
モンテッソーリ園
子どもたちが共同で学びながら、秩序やルールの理解が重要視されています。
モンテッソーリ教育の中では「秩序感」が重視され、子どもは物を決まった場所に片付けたり、他の子どもが使っている教具に順番を待つといったルールを学びます。
この「秩序感」の学びが、自己管理や自律心を養う上で非常に重要です。
おうちモンテッソーリ
親が家庭内で秩序感を教えますが、園での集団生活と異なり、他の子どもとのルールを学ぶ機会は限られます。
親がきちんと秩序を守る姿勢を見せることが重要であり、子どもが自然にその姿を学ぶことで家庭内でも一定のルールを守れるようになります。
教師の違い
モンテッソーリ園
教師が指導者となります。
モンテッソーリ教師(ガイドと呼ばれている)は、専門的な訓練を受け、モンテッソーリ教育法や子どもの発達についての深い理解を持っています。
教師は教具を使い、子どもが自発的に学ぶための支援を行い、過度な介入はしません。
モンテッソーリ教育の重要な役割である「指導者としての観察者」として、子どもが自分自身で課題に取り組むプロセスを見守り、必要に応じてサポートします。
おうちモンテッソーリ
親が指導者となりますが、専門的な訓練を受けた教師ではないため、モンテッソーリ教育の本質を理解するのが難しいこともあります。
モンテッソーリ教育においては、子どもを観察することがとても重視されていますが、専門的な知識や訓練を受けていない親にとっては観察のポイントなどがつかみにくく活かせないことが多いです。
親はモンテッソーリ教育の基本的な知識を学び、過干渉にならずに子どもを見守り、自発性を促すことが求められます。
また、教師とは関係性が異なることから、子どもが甘えてしまうようなこともあり、その対策が必要です。
人間関係の違い
モンテッソーリ園
年齢の異なる子どもたちが一緒に活動する「異年齢クラス」を通じて、年上の子が年下の子を助け、年下の子が年上の子に学ぶ環境が作られています。
集団生活は、子ども同士の交流が深まり、他者と協力しながら学ぶ機会を提供します。
また、年下の子は年上の子から刺激を受け、自分より年上のモデルとして成長を目指します。
人の多様性について学ぶ機会となります。
おうちモンテッソーリ
他の子どもと触れ合う機会が限られるため、社会的な学びや共感力の育成が難しいことがあります。
そのため、家庭でもモンテッソーリ教育の価値を最大限に活用するためには、友達や兄弟との交流を意識的に取り入れることが大切です。
おうちモンテッソーリを実践するためのポイント
おうちモンテッソーリの実践の鍵は知識が握っています。
本来のモンテッソーリ教育の原則を理解し、適用するための工夫が必要です。
おうちモンテッソーリは、ゴール設定に自由度が出る分、教具がない分だけ、目指す目標によってモンテッソーリ教育を取り入れる濃度が異なります。
例えば、子どもの日常生活における自立を促すことに焦点を当てた目標であれば、そこに向けた活動を行います。
知性を伸ばすことに焦点を当てた目標であれば、日常生活の自立に加え、より学習的要素を加えたモンテッソーリ教育の活動を取り入れることになります。
そして、社会性についても本来のモンテッソーリ教育であれば身につける環境があるものですが、なかなかおうちモンテッソーリでは再現が難しいです。
では、それを再現できるようになるにはどうしたらいいでしょうか?
本物のモンテッソーリメソッドの知識を出来るだけ多く得ることだと思います。
それが、考える上でのヒントとなり大きな助けとなりますね。
当然のことを偉そうに言ってます(笑)
今回、このように本物のメソッドとおうちモンテを比べてみたことにより、「改善する方法を考えなければ」と各々で意識が芽生えたはずです。
本物との違いさえ分かれば、各家庭で考えて、この違いについて向き合うことができます。
つまり、私たちに必要なのは、出来るだけ多くのメソッドを吸収し、違いを理解することです。
おうちでのモンテッソーリ環境の整え方は、メソッドをどれだけ知っているかで応用できます。